ろうあ被爆者の山崎栄子さん 手話で平和訴え/長崎(毎日新聞2017年6月19日)

ろうあ被爆者で、昨秋、兵庫県の淡路島にある聴覚障害者に対応した特別養護老人ホーム「淡路ふくろうの郷」に移った山崎栄子さん(90)が18日、長崎市に里帰りし、原爆資料館で講演した。山崎さんが手話で「原爆は怖い、悲しい、悲惨です」と訴えると、参加者たちは、手話で拍手を表すひらひらと両手を振る動作で応えた。【加藤小夜】
過去に支援団体が聞き取った記録などによると、山崎さんは生まれつき耳が聞こえず、言葉が話せなかった。原爆が投下された1945年8月9日、疎開先の時津町にいた。当日、爆心地近くの自宅にいたはずの姉を捜して長崎市に入り、内臓や骨が体外に飛び出たり、真っ黒焦げになったりした人を見た。山崎さんは2003年8月9日の平和祈念式典で、ろうあ者として初めて「平和への誓い」を読み上げる被爆者代表を務めた。手話で「ろうあ者はぽつんと孤立した状況にある。何も語らないまま亡くなっていった仲間たちのことを思うを、涙が止まりません」と語った上で、世界平和を願う気持ちを訴えた。山崎さんは88年に夫が急逝した後、長崎市内で一人暮らしをしていた。昨年、長崎のグループホームに入所したが、話し相手がおらずふさぎこむことが多かったという。しかし、昨年9月に移った「ふくろうの郷」では、定員(60人)の約3分の2が聴覚障害者。山崎さんは職員らの支援を得ながら、ホームを訪れる人に平和への思いを語ってきたという。自らも耳が聞こえない施設長の大矢暹(すすむ)さん(69)は「山崎さんは、自分を一生懸命取り戻されようとしていらっしゃる。どのように引き出すのか考えていきたい」と話していた。 〔長崎版〕

里帰り講演:「原爆は怖くて悲惨」ろうあ被爆者の山崎栄子さん 手話で平和訴え /長崎 - 毎日新聞