「手話言語条例」制定進む 県と8市町に拡大 (2017年04月07日読売新聞より)

手話を言語として位置づけ、普及を目指す「手話言語条例」を制定する自治体が、県内で増えている。3月に久喜、熊谷の両市が市議会で成立させるなど、制定した市町は8自治体に拡大。県も今月、施行から1年を迎えた。条例普及の背景には、聴覚障害者が暮らしやすい社会を目指す機運の高まりとともに、手話の認知度を向上させ、人手が足りない手話通訳の確保につなげたい狙いもあるようだ。(中田征志)

手話言語条例は、県民・市民、企業などに手話についての理解を求めるもの。手話を言語と位置づける障害者権利条約を国連が採択したことなどを受け、鳥取県が2013年に全国で初めて条例化し、全国に広がった。
県内では、朝霞市が15年9月に初めて制定。同年12月に富士見市、三芳町、16年12月に桶川、三郷、ふじみ野市と続いた。
県は16年3月に議員提案で成立させ、翌月から施行した。
県によると、現在、条例制定を検討中の自治体も12市町に上るという。
自治体は施行後、手話の普及に力を入れている。
朝霞市は、条例を紹介するチラシを作成、市職員に基本的な手話技術を学ばせる講習会を開いた。県も聴覚障害者雇用の理解を進めようと、企業を対象にした条例説明会を開催。
今年度には、手話の裾野拡大を目指し、小中学生向けの手話講座などを実施する予定だ。
手話の認知度向上は、手話通訳の増加につながるとの期待もある。障害者総合支援法は、都道府県や市町村に手話通訳派遣事業を行うことを義務づけているが、全国的に通訳不足が深刻なためだ。
同法に基づき、県内で開かれる自治体や民間主催のシンポジウムや裁判員裁判での通訳など高度な手話技術者の派遣を行っている県は、15年度に3100件の依頼を受けた。
しかし、通訳のやりくりができず、うち100件を断った。
通院や公的機関での手続きなど、日常場面に対応できる通訳の派遣を担当している市町村も、通訳の都合がつかず、依頼に対応できないことは珍しくないという。
県は手話通訳の養成を行っているが、16年度の参加者は初級コースが22人、中・上級が14人と少なかった。
県障害者福祉推進課は「遠回りのようだが、条例で手話に対する認知度を向上させ、手話に興味を持ってくれる人を増やすことで、通訳の増加につなげたい」としている。 http://www.yomiuri.co.jp/local/saitama/news/20170407-OYTNT50191.html