【資料】聴覚障がい者への話し方

【資料】聴覚障がい者への話し方


(1)誰が話し手なのかをわからせる。

 <例>まず、名前を呼んだり、手をふったりして、話し手に注意を引きつけ、しかる後に話しかける。

(2)話題を知らせてから話す。

 聞く側としては、これから何について話されるのか、アウトラインがわかっていれば、話の流れにのりやすく、あいまいに聞こえた言葉も、前後から類推しやすくなる。

(3)ゆっくりと、しかも自然な口調で話す。会話の速度を少し落とし、しかも言葉のリズムは崩さないで、ハッキリ話す。

 大声を張り上げたり、発音を誇張してはいけない。そうすると、かえって口の動きが不自然になったり、補聴器から入る音声が歪む。

(4)いつも口元が見えるようにして話す。

 マイクや煙草で口元をさえぎらないで、口をハッキリ開いて離す。

 動きまわったり、逆光の位置だったり、板書しながら話したり、背後から話すと、口の動きが見えない。

(5)一度話して通じないときには、別の言い方に言い換える。伝わらなかった言葉を何度も繰り返すよりも、別の表現に替えて話す。

 <例>「旅」を「旅行」に言い換える。

(6)表情や身体表現を豊かに話す。

 緊張せずに、生き生きと話す。イントネーションをつかめなくても、表情や身体表現から話のリズムを読み取ることができる。

(7)視覚的手がかりを多く使って話す。

 <例>実物、絵、文字、デザインなどを併用して話す。

(8)会議などで、一度に複数の人が話しかけない。

 一人の話が終わったら、次の話し手に注意を向けさせる。集団の話し合いの場面では、今の話し手が話し終えたこと、次の話し手が誰に移ったか、などについて司会役が注意を喚起させながら進行させる。

(9)急に話題を変える時には、しかる旨、知らせて注意を喚起する。

 難聴者は、聞こえにくい言葉を話の前後から類推しながら聞いている。話題や行動を急に変えると、ついていけない場合がある。

(10)「はい」とうなずいた場合でも、もう一度確認する。

 「質問そのものがわかった」という意味でうなずく場合がある。

 だから、うなずいても「内容が理解された」と早合点しないで、質問に対する答を確認する。

 「紅茶か、コーヒーか?」のように具体的に回答を求めるほうが正確に伝わる

(正確に回答される)。

(11)目新しい語句や数字は、あらかじめ知らせておくなり、紙やホワイトボードなどに書いておくほうがよい。

 映画などは、あらすじを事前に知らせておくと、聞き取りが楽になる。

(12)周囲の騒音をできるだけ少なくし、近づいて話す。

 補聴器で聞く場合、周囲の騒音も一緒に増幅されて耳に入る。その分、聞き取りにくくなる。

 なるべく静かな環境で話す。そういう環境がない場合は、近づいて話す。

(13)その他

 ノートテイク、磁器ループなど環境整備すると、聞き取りの力が増す。


□以上は、大沼直樹・筑波技術短期大学教授(当時。後に、筑波技術短期大学学長、東京大学 先端科学技術研究センター:客員教授、同先端研特任研究員など)の論文「聴覚障害者への話し方」を小島が抜粋、要約し、同教授の許可を得て、小島(当時・全難聴情報保障部長)名で作成した。

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【参考】耳鼻科医の助言

 ①周囲の雑音がないようにして正面から話す。

 ②本人がうるさく感じない程度の大きな声で話しかける。

 ③ゆっくり、はっきり話す。

 ④理解しにくい単語は別の言葉で置き換える。

 ⑤本人が理解できているか確認しながら会話をすすめる。

 etc.